「青木は面白いよ!」

玄関を出て、泣きながら急ぎ足で歩いて、大通りに出た。わたしの泣き声は、クルマの音にかき消された。

30代のまえけんさんと、まえけんさんの親友なっちゃん。(写真:青木さやか)

「青木!」

ふりかえると、後ろから自転車で健さんが追いかけてきた。わたしは、前を向き、さらに急ぎ足になった。自転車の健さんはあっという間にわたしに追いついた。

「青木!」

わたしは無視した。

「青木! 青木は面白いよ!」

健さんは、夜の大通りで叫んだ。叫ばないと声が聞こえないほどクルマの音が大きかった。

「青木は面白いよ!」

わたしは、健さんのほうを振り返り、こう叫んだ。

「わたしは、面白くない!」

「青木は、面白いよ!」

「面白くない!」

「面白いって!」

「面白くないから、いい!」

わたしは、泣いていて、なんだか健さんも少し泣き顔になりながら、わたしが面白い、面白くないを、ただただ叫びあった。