それからはわたしが面白いかどうか、語り合わなかった
「青木! ごめん!」
「いいよ! べつに!」
「ごめんね」
「いいけど、わたしは、面白くない! 面白いって、言わないで!」
「わかった!」
「面白くないから!」
「わかった!」
「……」
「帰ろうよ」
「……」
わたしは、いまきた道を自転車を押しながら歩く健さんにとぼとぼとついていった。
わたしたちは、それから一度も、わたしが面白いかどうかを語り合わなかった。
※本稿は、『厄介なオンナ』(大和書房)の一部を再編集したものです。
『厄介なオンナ』(著:青木さやか/大和書房)
芸能界という世界の中で商品であるには、わたしはちょっと繊細すぎて、厄介であった。容姿いじり、飯島愛さんのこと、パニック症など珠玉のエッセイ。光浦靖子氏との対談「世間の目を気にして数十年生きてきました」収録。