舞台挨拶に、いつもの侍の装束とは違うスーツ姿で現れた《日本一の斬られ役は》 照れることしきり。司会者から「もっとステージの真ん中へ。主役なんですから」と促された

呼吸が合うとストンと死ねる

テレビで毎日斬られていると、なんか変わったことしようと思うようになって、いろんな死に方を試しました。ほかの人たちの瞬間の動きを読んで、主役が振りかざした刀と侍役たちが作る隙間の向こうで倒れたら、少しでも重厚な感じになるやろか、と工夫を重ねて。

そんな中で思いついたのが、海老反り。わしの背中越しにカメラは主役を狙っていますやろ。そこで斬られた時に、主役の姿と海老反りになって逆さになったわしの顔が一緒に映ったら面白いんやないかと。

当たり前のように楽しんでいただいている立ち回りのシーンでも、主役を目立たせながら呼吸を合わせるのはなかなか難しい。単純にバタンと倒れているわけではなく、間合いの取り方が難しいんです。

斬り合う瞬間に、お互いの呼吸がぴったり合うと、ストンと死ねることがあるんですわ。「今のは気持ちよく死ねた!」と。なんや物騒な話になりますけど(笑)、劇的に死ねたら映像は重厚になりますからね。ひとつひとつ殺陣師さんらに認めてもらって、自分からチャンスをつかまんと、向こうからは何もやって来ないんですよ。

昔、『仁義なき戦い』の深作欣二監督が、いい言葉をくれました。「映画というのはひとりで作るんじゃない。主役だけが主役でもない。フレームの隅、背景の端のほうで斬られる役者がいい加減に演じていたのでは、画全体が死ぬ。スクリーンの片隅で斬られる時も、個性を出して死ぬんだぞ」。

『太秦ライムライト』の慣れない主役に緊張して眠れない夜が続いても、この言葉を思い出すと妙に落ち着いてきて、肝が据わるのです。なるようにしか、ならん。それやったら一所懸命やるしかない、と。