『三千円の使いかた』(著:原田ひ香/中央公論新社)

小説家への第一歩だったシナリオコンクール

ジェイソン 原田さんはどうやって小説家になったのですか?

原田 20代から30くらいになるまで秘書の仕事をしてたんですけど、この先は違う仕事を考えなきゃいけないと漠然と思って、いろいろ模索していたんです。

ジェイソン それで本を書き始めたんですか?

原田 いえ、ワインが好きだったのでフランス料理の給仕はどうだろう? とかね。料理人になりたい時期もありました。その後に結婚して仕事を辞めて、夫の関係で北海道に移住した際、何かできることがないかなーと思った時に…

ジェイソン 北海道は何もないからですか?!

原田 まさか! その時インターネットがちょうど普及し始めた頃で、ネットでシナリオの書き方というのを見つけて、書いてみたんですよ。そうしたら、たまたまフジテレビのコンクールの最終選考に残ることで、テレビのお仕事の声がかかるようになり、シナリオの仕事につきました。

ジェイソン 第一作目からプロの目にとまったのですね?

原田 ありがたかったです。それから帰京して、3年間はテレビのシナリオの仕事をしていました。そしてNHKにはラジオドラマというのもありまして。そのコンクールに応募したら大賞いただいたので、しばらくラジオドラマも書いていました。でもある時「シナリオを書くのはなんか違うな」と思って全部辞めてしまいました。

ジェイソン どうしてですか?

原田 私にとってはストレスがあったんです。うまく言うのは難しいのだけれど「自分の作品はすごく素晴らしいんだ」って上手に説明しなきゃならないし、そういう人が勝つ、みたいな世界で。

ジェイソン 上手くプレゼンしないといけないのはどこの世界もそうじゃないですか?

原田 そうですね。でも小説の方が作品そのもので勝負できるかな。それと、シナリオは無断で書き直されてしまうことが多かったんです。小説も手を加える作業はあるのですが、編集者と話合いをした上でのことなので、私の性格には合っていましたね。小説も、初めて書いたものが運よく賞をいただいて、小説を書くことにしました。

ジェイソン 小説の方が自分の意思を反映しやすい世界なのですね