柚木 私の好きな名バイプレーヤーの金田明夫さんが、揉み手をする小悪党役を演じてきたのに、客の悩みを聞く気のいい居酒屋の店主という「善」の役に切り替えたときは、思わず立ち上がりましたね。
あと、朝の連続テレビ小説『ひらり』(92~93年)のときはモテモテ役だった渡辺いっけいさんは、後に部下に振り回される上司や妻になめられる夫役など腰抜け役のプロに。役者たちがどう変化していくのかも観たいのです。
酒井 先ほど名前が出た平岩紙さんや江口のりこさんなど、昨今、一重瞼の女性俳優の活躍が目にとまります。その点、韓国と比べて後れをとっていましたが。
柚木 今は、江口のりこさん、岸井ゆきのさん、山田真歩さん、安藤玉恵さんというこの4人が出れば、一見支離滅裂にみえるドラマも何とかまとまる、という法則を打ち出しているんですよ。
酒井 少し前までは、浮世離れした華やかな顔立ちの方がテレビに出るというイメージがありました。もちろん皆さんきれいですが、どこか身近に感じるような容姿の方たちが登場することで、ドラマにも厚みが出ますよね。
柚木 グラデーションが生まれてきたのは、すごくいいことです。
酒井 容姿といえば、ドラマのなかでポリティカルコレクトネス(偏見や差別を含まない表現や言葉を用いること)はどう変化してきたのでしょう。
柚木 日本は他国に比べるとまだまだ遅れていると感じますが、それでもちょっとずつ変わってきているように思います。「あっ、容姿について言わなかったな」とか、「『冴えないバッグ』のように、服装などに置き換えて表現したな」ということが増えてきましたから。