酒井 中高年女性と言えば、『やすらぎの郷』(17年)は、シニアの名優たちが勢揃いし、話題になりました。
柚木 これからもっと、シニア世代のドラマは増えるでしょうね。梶芽衣子さんがインタビューで「おばあさんが銀行強盗をする話をやりたい」とおっしゃっていて、それだ! と思いました。草笛光子さん、三田佳子さん、銀粉蝶さんで強盗チームを組んで、キレッキレの活躍を……。イメージがどんどん湧きます。
酒井 それは観たい(笑)。日本のドラマはこれからどのような方向へ進むことを期待されますか?
柚木 日本が得意なのは、外国のよいものを取り入れて日本人好みにアレンジすること。たとえば『グレイス&フランキー』というアメリカのドラマがあります。長年連れ添った2組の夫婦の夫同士が不倫をしていて、残された妻たちがふたりで生きていくことに──、という話。この日本版に、泉ピン子さんや宮本信子さんなど70代以上の名優をキャスティングしてみるとか。
酒井 それも一種のシスターフッド……?
柚木 あとは、これまでヒットしたドラマを、男女を逆にして作ったりとか。『忠臣蔵』『新撰組』を全員女でやってもいいですよね。
酒井 まったく新しいものを作り出さなくても、既存のものを工夫して上手に使うのもアリですね。
柚木 冷蔵庫を開け、「この材料で何ができる?」と考えられるのが日本です。脚本家も然り。かつて菊池寛も、「新人発掘もいいけれど、書けなくなった名作家に古典や歴史を勉強させて再び書かせるようにしたほうがコスパがいい」みたいなことを言っていましたし。
酒井 さすが菊池寛! コロナ禍で動画配信サービスも浸透し、ドラマを観る習慣自体が復活してきた今こそ、実は日本のドラマのチャンスかもしれませんね。