エッセイストの酒井順子さんが、世の中の気になるアレコレをゲストに学ぶ対談連載が現在発売中の『婦人公論』2月号からスタートします。初回にお迎えしたのは、柔道家で日本オリンピック委員会(JOC)の理事を10年間務めた山口香さん。2月に開催される北京冬季五輪を前に、オリンピックやスポーツ界の課題を聞きました。後編は、まだ柔道の女子選手が少なかった時代のお話。リニューアル第1号となる本誌から特別に全文を公開します(構成=福永妙子 撮影=洞澤佐智子)
逃げ回る男の子を追いかけて
酒井 山口さんが柔道を始められたきっかけは何だったのですか?
山口 テレビドラマ『姿三四郎』を観て、軽い気持ちでやってみようと(笑)。6歳から町道場に通い始めました。
酒井 親御さんの反対などは?
山口 私は三人姉弟の次女なのですが、姉が柔道をやると言ったら「危ないからダメ」と親は反対したと思います。でも、2番目になると手を抜くので(笑)、礼儀正しくなるんじゃないか、体も丈夫になるんじゃないかと、賛成してくれました。月謝も安くて、毎日通っても数千円で。
酒井 定額で行き放題……柔道のサブスクですね。(笑)
山口 逆に、休むと電話がかかってきちゃう。
酒井 見込まれていたんですね。
山口 いえ、みんなにそうするんですよ。柔道が大好きな先生で、常に柔道着を着ているような人でした。
酒井 周りが男の子だけというなかで、6歳から柔道を続けてこられたのですね。
山口 小学校のときは、男の子に負ける感じはしなかったんですよ。そもそも私が強かったということもありますが(笑)、女の子は成長が早いので体格も負けていない。だから組む相手を探すのが大変で。男の子のほうが、女の子に負けたくなくて逃げ回るので、柔道着を掴んで「やろうよ」って追いかけていましたね。
酒井 ふふふ。