「自分の体の使い方や呼吸法も学べるし、立ったり座ったりするだけでも、いい運動になります。柔道は生涯体育にもなるんですよ」(山口さん)

女子だけの筆記試験に「差別」と感じたが…

山口 嘉納先生の言葉に「精力善用 自他共栄」というのがあります。力まかせに相手をねじ伏せるのでなく、心身の力を有効に活用しよう。互いに信頼し助け合うことで、自分も世の中も栄える、といった意味です。ただ、嘉納先生が亡くなると、勝ち負けの部分が強くなってしまって。

酒井 《嘉納イズム》はあまり一般人に知られていないですし、今の柔道からはなかなか感じられない気がしますが……。

山口 そうですね。だからこそ、歴史を学ぶことは大事だなと思います。以前は段位を取得するときに、ある段位以上になると女子にだけ筆記試験があったんです。

酒井 えっ! 女子だけですか?

山口 私は「差別だ」と批判しましたが、筆記試験は先ほどの「精力善用 自他共栄」について考えを述べよなどの設問があり、とてもいい試験です。だからこそ、男女ともにやるべきだと思っています。