イラスト:竹井千佳

厚生労働省の 「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」(http://www.mhlw.go.jp/kokoro/)には「認知症は、脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態」で「話が通じなくなる、妄想があるなどのサインが出てきたときには、専門機関に相談」と書かれています。ですが一口に「認知症」と言っても幅広い症状を発症するため、家族が振り回されることも多いもの。しかも、1対1の介護という孤独な状況は、心身に支障をきたす恐れも。吉野真代さん(兵庫県・自営業手伝い・52歳)の場合は、舅が脳卒中を起こしたことをきっかけに同居することになりました。協力者のない介護の苦悩とは――。

初めて二人になったときも

私が恋愛結婚をしたのは21歳のとき。新婚生活も半年が過ぎたころ、愛媛で一人暮らしをしていた68歳の舅から電話があった。でも、ろれつが回らず、何を言っているのかわからない。あわてて大阪から愛媛に向かい、舅を病院へ連れて行くと、脳卒中と診断された。

もともと身体が少し不自由だった舅だが、さらに左半身麻痺に。一人暮らしはさせられないと、大阪に呼びよせ、認知症の症状もあったので私が家で面倒をみることになった。食事もトイレも、お風呂に入れるのも私の役目。私はまだ若かったこともあり、舅の裸を見るのには抵抗があった。けれど、舅も慣れない大阪で可哀想だという思いもあり、がんばっていたのだ。

ところがある日、お風呂に入れようとしたとき、舅が突然にやりと笑い、「おまえになら裸を見せてもいい。ここを洗ってくれてもいいぞ」と言ったのだ。その言葉には虫唾が走った。ボケているとはいえ、まだらなので、正気で言っているのかどうかわからない。

しかし、思い返せばこのときだけではない。夫に連れられて初めて愛媛に帰省したときのこと。夫が友達に会いに外出し、舅と2人で家にいることになった。「風呂に入るなら沸かしてやる」と勧められ、先に入ると、彼は「湯加減はどうだ?」と覗こうとしたのだ。後で夫に話しても相手にしてもらえなかった。連れ合いを亡くして女性が珍しかったのかもしれないが、耐えられない出来事だった。