舅の視線がストレスに
同居してから、夫は仕事で家におらず、多くの時間を舅と2人で過ごすことになった。会話はほとんどなく、舅は言語障害が残ったので、何を話しているかわかりにくいこともしばしば。私はストレスが溜まる一方で、ときどき実家に帰っては両親に愚痴をこぼす。近くに住む夫の上司の夫婦から、「実家に帰りすぎだ」と陰口を言われ、私はうつになりかけたこともあった。
子作りをするにも、襖を挟んだ隣には咳払いをする舅がいると思うと、とてもできない。とうとう、広くて部屋数のある住宅に引っ越した。
結婚7年目、ようやく長女を授かったけれど、つわりがひどくて寝ていることが続く。ある日、ふと目が覚めると、部屋に舅が入ってきていた。「おまえは、じっとしていればいいから……」と言われ、ぞっとして起き上がったことも。料理をしているときも、ダイニングで座る舅の視線を感じてストレスが溜まる。夫に相談すると、「考えすぎだ」と言われ、喧嘩になった。
しかし、舅の認知症も進行し、私の気持ちも変化していった。トイレに間に合わずもらしてしまい、しょげた顔をする舅。「あーあ、早く着替えなくちゃね」と、私もなんとも思わずに対処できるようになった。私が顔を出すと、にっこりして嬉しそうに話す舅の顔がいまでも目に浮かぶのだ。
そんな生活が続いたが、舅の症状は重く、施設に入れることに。その3年後、舅は亡くなった。ちょうどその頃から、夫の仕事が不景気のあおりで、うまくいかなくなる。家で暴力を振るうこともあって、私は限界を迎え離婚した。
舅が生きている間は、病院代や施設代を払うために、アルバイトを掛け持ちし、夜中まで眠る間を惜しんで働いた。同居は我慢できないこともたくさんあったが、いま考えると、舅は「もう苦労しなくていいんだよ」と、私を解放してくれたのではないか、と思うことがある。