1階と2階の別々生活で平和に

「このままではストレスで体調を崩してしまうと、他県に住む娘にグチをこぼしたら『家の1階と2階で別々に暮らせば?』と言われて。確かに上の2部屋は、実質空き部屋状態。一部屋は娘夫婦が里帰りしたときのために空けてありますが、もう一方は物置にしていました。なるほどと思い、そこを片づけ、私の部屋にすることにしたのです」

1階の寝室から自分の布団や衣類を運び込み、ディスカウントストアで小型の液晶テレビと一人用テーブルセットを購入。夫には「私が騒々しいせいで迷惑をかけているようですから、今日から上で生活します」と宣言した。夫は呆然としていたが、自身の言動が発端なだけに何も言えない様子だったという。

「現在、食事だけは一緒に摂っていますが、それ以外は別行動です。顔を合わせる機会が減るにつれ、私のストレスも激減しました。何より好きなドラマを静かに観られることと、邪魔されずに眠れることが嬉しくて。掃除は『1階の居間と寝室はあなたのエリアだからね』と任せていますし、洗濯物も夫の分は取り込むだけで居間に置き、自分で畳んでもらっています」

まさに“プチ家庭内別居”を実践中の良子さん。1年たった今では、お互いに生活のリズムができつつあり、会話は減ったものの、ムダな言い争いもしなくなったという。実際、中高年の妻に話を聞くと「せめて寝室だけでも分けたい」という人が少なくない。自分だけのスペースの確保は、精神安定のためには欠かせないものなのだ。

 


ルポ・悪戦苦闘の末、「家庭内別居」を選択した妻たち

【1】「昼飯は何だ?」定年夫との生活は安息の老後とは程遠く
【2】「家事を楽しんでいると思っていた」大嫌いな主婦業を卒業した日
【3】毎朝4時半に起床する夫。生活スペースも食事の支度も別に