2019年11月撮影。「新しく写真を撮るヒマがあったら、今は1枚でも書き進めたい」(撮影:宮崎貢司)

100万部突破の『九十歳。何がめでたい』(2016年、小学館)以来、自身何度目かのブームが続いている作家の佐藤愛子さん。長くユーモアエッセイで人気を博してきたが、「かくして私は筆を措(お)きます」と記し長年続いた女性週刊誌の連載を終了したのは2021年5月のこと。その後は楽隠居を決め込んでいるかと思いきや、再び筆を執っていたという。2022年、新境地を見せるエッセイ連載を『婦人公論』で開始した心境は。(構成=本誌編集部)

断筆後の生活は「ヒマで退屈」

98歳。作家では最高齢の域だ。

2021年5月に雑誌のエッセイ連載を終了し、執筆は打ち止めにすると決めた。以来1年あまり。

「もう私なんか忘れられていますよ。死んだと思っている人もいるんじゃないですか」と笑う。

仕事をやめたことで、体は元気を取り戻した。2021年秋、庭で転倒し肋骨を痛めたが、病院には行かず自力で治したという。

「娘や孫が救急車を呼ぶって言うからね、冗談じゃない、何を言うかって(笑)。肋骨なんて寝てりゃ治るのに、入院させられたら、自分らしい生活ができなくなる」

もともと外出ぎらいなうえ、コロナ禍になってからは週に一度、整体に通うほかはいっさい出かけない。しかし、断筆後の生活は、どうしようもなく「ヒマで退屈」だった。