“ヴィジュアル系ブーム”への反抗

この事件は、“スター気取りのラルクのわがまま”といったようなマイナスエピソードとして語られることもあるのだが、己の美学を追求しているだけなのに、流行の一環として後追いの言葉で括られることに対する反発であり、さまざまな偏見を持たれてしまった“ヴィジュアル系レッテル”への反抗でもあった。

「流行の一環として後追いの言葉で括られることに対する反発であり、さまざまな偏見を持たれてしまった“ヴィジュアル系レッテル”への反抗でもあった」(写真提供:Photo AC)

tetsuは先述の単行本にて「ヴィジュアル系は人を見た目で判断する差別用語」とはっきり述べている。ゆえに事件当時、ラルクファン以外からも賛同の声があった。それだけ、ヴィジュアル系という言葉は独り歩きしていたのである。

そういったアーティスト当人によるヴィジュアル系ブームへの反抗はもっと前からあった。

私が違和感のようなものを覚えたのは、LUNA SEAが『ミュージックステーション』(テレビ朝日系列)に初登場したとき(1994年)のことである。

それまでロックに興味を持っていなかった女の子たちが次の日から「LUNA SEAのボーカル、カッコいい」と言い出したことをよく覚えている。ただ、私の違和感はそうした世間の反応ではなく、髪が短くなり、薄いメイクになったRYUICHIが他の出演者に混じって爽やかに話している姿だった。