それから何年経ったでしょう。ある日「妻が亡くなった」という手紙が弟から届きました。がんだったようです。そこには、義妹が亡くなったのは私たちのせいだといわんばかりの文章が。「お悔やみの言葉や何かしようものなら、殺すからな。母は90歳過ぎまで生き、妻は50代で亡くなった。誰のおかげで長生きできたと思っているのだ」。

親に対してなんと残酷な言葉。しかし母は冷静でした。子は母を憎んでも、親は子を憎むことはない。母はその後も、弟の幼い頃の話などを思い出しては、私に聞かせてくれたのです。

最近、弟のことで夫とケンカしました。母を引き取るとき、何の連絡もよこさず、頼むの一言もお礼もなく、弟たちの勝手でこのようなことになったことを夫は納得していなかったのです。このままではよくない。でも私が弟に手紙を出せば、何をされるかわかりません。母にお願いして書いてもらうことにしました。

すると弟からは、「親とも思っていない、葬儀にも出ない」という返事が。母はショックだったと思います。何日かすると、弟から再び手紙が届きました。そこには「先日の手紙は、人としてどうかと思うので、97歳の人の願いを聞く」という文章と、夫に宛てたお礼の手紙が同封されていました。

母を引き取るときに話し合いができていたら、弟たちとのつきあいも続いていただろうに、と夫は残念そうに言います。なぜこのような関係になってしまったのでしょう。

弟の手紙には、「夢も希望もない。いつ死んでもいいと思っている。娘2人のために生きる」と書かれていました。娘たちに支えられながら幸福に生きてほしい。いつかまた、普通のきょうだいとして会えたらいいなと思います。

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