「身をよけてこそ浮かぶ瀬もあれ」
残念なのが、14日目に3敗でのぞんだ前頭8枚目・北勝富士。関脇・若隆景に寄り切りで敗れた。若隆景は、土俵入りで花道を進む時から一点を見つめ、丹田に気合いを込めた姿で、取組の仕切りの時も変わらなかった。一方、北勝富士は、最後に塩を取りに行った時に拳を額にやるポースだけでなく、いつもより廻しをせわしなく叩いたりなどして落ち着かなかった。私は、負けるような気がしていた。
今場所は、10日目に横綱・照ノ富士が膝の悪化で休場し、大関・正代は9日目に負け越して来場所はカド番。大関・御嶽海はカド番を脱出できず11日目に大関陥落となった。
横綱と大関が崩れる中で、大関・貴景勝だけは頑張ってくれることを願っていた。
12日目、貴景勝は勝ち越しをかけ、9勝の北勝富士と対戦した。貴景勝は立ったとたんに左によけ、北勝富士は勢いよく進みドドッと土俵に手をついた。
「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という言葉があるが、「身をよけてこそ浮かぶ瀬もあれ」だ。貴景勝は勝ち越せたが、私は熱戦を期待していたので気持ちが沈んだ。
13日目の結びの一番は貴景勝と若隆景。大関を目指すならこの日に勝ち越し、さらに二桁勝ちたい若隆景は、立ったとたんによけて、貴景勝は瞬時に土俵に手をついた。
貴景勝は昨日よけているから「明日は我が身」であった。熱戦が見られるという私の期待は浅はかだった。
勝たなければならない辛い事情は分かるが、2日続けて大関と関脇の立い合いの変化を見せられると、相撲ファンは脱力する。最後に登場して締めてくれる横綱がいればまだしもなのだが…。