相続は、「平等」が基本

ここからは、私が見てきた相続トラブルで多い原因とともに、子どもたちができるトラブル回避法についてもお話ししておきます。

最も多いトラブルは、「介護をした子」と「介護をしなかった子」の相続。たとえば、介護をしてきた姉は、何も手伝わなかった妹よりも多くもらいたい。けれど、妹から「平等にもらう権利がある」と主張されたとします。この場合、残念ながら平等に分けざるをえない。法律で「寄与分」という制度があるものの、認められることは少ないからです。

介護にまつわる相続トラブルを避けるために、私がおすすめしているのは、親の介護がスタートした時点で、親子でよく話し合って、生命保険の受取人を介護してくれる子どもにしておく方法。生命保険金は受取人固有の財産となり、遺産に含まれないため、指定した人が受け取れます。

あるいは親に遺言書で、「姉は6割、妹は4割」などと明記しておいてもらう。ただし、認知症を発症すると、法律上「意思能力のない人」と認定され、生前贈与や遺言書が認められなくなるので、遺言書を作る時点で医師の診断書を用意しておくようにしましょう。

次に多いのが、「援助してもらった子」と「援助がなかった子」の場合の相続。「兄さんは家を建てるときに頭金1000万円を出してもらったのだから、その分相続から差し引いて!」と妹が主張したとします。

これは遺産の前渡し(特別受益)に相当し、仮に相続財産が3000万円だった場合でも、兄が事前にもらった1000万円が加算されて、4000万円を2人で分けることに。親亡きあとの相続としては、妹が受け取るのが2000万円、兄は1000万円になりますが、兄は文句を言えません。揉めないためにも、親が生きているうちに「家の頭金は相続に含まない」と書面に残しておいてもらうこと。そうすれば、兄妹は1500万円ずつ相続できます。