また、「親の残した不動産と現金のバランスが悪い」場合も揉める原因になりがちです。たとえば、家の評価額は4500万円、現金は500万円しかないという場合です。兄は実家を相続したいから、弟に現金を渡すと言い出して、トラブルに発展。本来の兄弟それぞれの相続分は2500万円ずつになりますので、弟が怒るのも無理はありません。

法律的に見ても、どうしても兄が家を相続したいのであれば、弟に残りの2000万円を支払わなければならないのです。「現金は持ち合わせていない」という人もいるかもしれませんが、弟が不服とした場合は、分割払いであっても支払いの義務が生じます。

やはりここでも、遺言書が有効です。兄に不動産を、弟に現金をなど、きちんと明記しておくこと。子どもたちが納得できる理由を伝えておくことでトラブルは回避できるでしょう。相続は必ずしも平等に分ける必要はなく、相続人全員が納得すればそれでよいのです。

ちなみに、不動産の評価額を正確に出すには、不動産鑑定士に依頼するしかありません。とはいえ、不動産鑑定は非常に難しく、たとえプロであっても、担当者により評価額が変わるうえ費用もかかるため、できれば避けたいところ。

自分たちで不動産価格の落としどころを見つけるなら、国税庁が公表している「路線価」を1.25倍にすると、市場価格に近くなるので参考にするとよいでしょう。

もうひとつ、「きょうだいの使い込み」もトラブルの原因になることが増えています。これは親との同居や介護を理由に、親の通帳を預かった子どもが、介護とは関係のないことにお金を使ってしまうケース。ともに暮らしている以上、食費や光熱費など生活にかかるお金には使っても問題ありませんが、子どもが自分の交友費に使ったりするのはNGです。

きょうだいに咎められないためには、簡単な帳簿をつけるようにしましょう。「親のために使った」という証拠が残っていれば、「あのお金はどうした! 相続分を使い込んだんじゃないのか」と言われずに済みます。預金通帳の明細をさかのぼれるのは10年ですから、きょうだいの使い込みが気になる場合は、早めに確認しておくとよいでしょう。

相続の話は亡くなってからでは遅いのです。親が元気なうちからタブー視せず話をしておくことが、禍根を残さず納得できる相続への近道になる、と心に留めておいてください。