歳を重ねてからきょうだいと衝突する2大要因は、「親の介護」と「相続」です。「親の介護」について、トラブルを回避するために知っておきたいポイントを、専門家である、理学療法士・公認心理師の橋中今日子さんに聞きました(構成=島田ゆかり イラスト=あべさん)
《介護の呪い》のような価値観
私は20代でがんの父を看取り、その後、認知症の祖母、重度身体障害の母、知的障害の弟と、ヤングケアラー歴を入れると約40年、ほぼ一人で家族の介護をしてきました。
結婚して家を出ていた姉は介護に非協力的で、「父が危篤だ」と連絡してもなかなか帰ってこないような人。姉がなぜそんな態度だったのかについては、後に「自分が介護をきちんとできないことが怖い」からだとわかりましたが、「なんてひどいの!」と、信じられない気持ちになったものです。
このように介護が原因で、きょうだいとの間に溝ができ、トラブルに発展。最悪の場合、絶縁ということにもなりかねません。その理由は、「きょうだいだからわかり合える。協力して、介護に関われるはず」という、一方の希望が裏切られてしまうからです。
たとえば、自宅で親を介護し疲弊している自分に対し、「施設に入れたら」という兄を冷たいと感じる。介護を任せっきりにしておきながら、上から目線のアドバイスやダメ出しをする妹に苛立つ。あるいは、協力をお願いしても関わろうとしない姉に怒りを覚えるという場合もあるでしょう。
いずれも、「きょうだいなら、自分と同じ思いで親を介護するはず」という期待が裏切られるから起こる感情です。けれど、きょうだいとはいえ、性格はもちろん、親との関係性、介護の経験値や考え方にも違いがあります。