また、最近増えているのは、認知症の親が、介護している自分には冷たく当たるのに、時々来るきょうだいにはニコニコして態度が変わるというケース。これは「たまに来るお客様」に愛想よくするという《介護あるある》の悩みの行動ですが、介護している側は傷つきますよね。
いずれにしても、これらのトラブルの根本には「親の面倒は子がみなければならない」という《介護の呪い》のような価値観があると、私は思っています。極端な話をすれば、子どもが親を介護するのは義務ではありません。
私は介護に悩む相談者の方に、「できないならプロに任せていい」とアドバイスをしています。「そんな薄情な……」と言われる方が多いのですが、これが長引く介護に備えての大前提です。
私自身の経験でいうと、介護を通して祖母や母、姉との軋轢を修復できたので、介護をした時間は宝物になりました。また、祖母と母からは、「ありがとう」という言葉ももらえた。しかし、自分と同じ気持ちや行動をきょうだいに求めても苦しくなるだけ。まずはそれぞれの考えを尊重すると心得て。そのうえで、協力してくれるよう促すコツがあるのでご紹介しましょう。
職場でも家でもない「第三の居場所」を作る
介護に協力的ではないきょうだいの本心は、「親への愛情がない」「親に興味がない」のではなく、「親が老いて自立できないという現実を直視できない」「自分が何もできないことを知られたくない」など、さまざまな気持ちや要因が隠れている場合が多いのです。ですから、相手が得意なことや簡単なことからお願いしてみると、案外すんなり手伝ってくれることもあります。