子どもができることは限られている
きょうだいトラブルの最大の原因は、「相続」といっても過言ではありません。お金の問題は根深く、裁判で10年以上争い続けている人もいます。けれど、相続で揉めるのは得策ではないとアドバイスをしたいのです。
訴訟になれば弁護士費用がかかりますし、ストレスも甚大。修復不可能な溝を残すことも少なくありません。そうお伝えしても、揉める人たちが後を絶たないのはなぜでしょうか。
それは親が意思をきちんと示していないことが原因の場合が多いのです。相続に関しては、子どもができることは限られています。「子どもたちは仲がいいし大丈夫」「うちは遺産なんてほとんどないから」という発想は危険だと覚えておきましょう。
親ができることの一番は、遺言書を作成すること。2020年から法務局による遺言書の保管制度(有料)がスタートしたことで、自筆の遺言書でも紛失する心配がなくなりました。途中で内容を変更することも可能ですので、利用するとよいでしょう。ただし、書き方には最低限のルールがあるため、詳細は法務局に問い合わせを。
遺言書には財産の配分だけでなく、「付言事項」として親の気持ちを書いておくのもおすすめです。「きょうだいで仲よく分けてほしい」「A子には介護をしてもらったので6割を残す」など、財産分与の理由、家族への感謝や想いを記しましょう。付言事項があると、多少不平等になったとしても「お父さんの気持ちを尊重しよう」など、子どもが受け入れるケースが多くみられます。
また、元気なうちに、現金、保険、有価証券、不動産など全財産がわかるようにしておくこと。家族会議を開いて、親の意思を直接伝えておくことも重要です。子どもたちの相続する財産が3000万円+(600万円×子の人数)を超える場合は、死後10ヵ月以内に遺産分割を済ませなければなりません。遅延すると、相続税の特例が受けられなくなり、税率が上がってしまうので注意しましょう。