もし生活費が尽きたらどうするのか。親の死後は誰が世話をするのか――。50代、60代のきょうだいが悩みのタネという家族に、いま抱えている不安について聞いた
母の仕送りも0円に。半身不随の弟の未来は
「一昨年の春、私が仕事から帰宅すると、都内の病院から電話がかかってきました。弟が脳梗塞で倒れ、入院したので来てくださいと言うんです」
そう振り返るのは、埼玉県に住む中野聖子さん(56歳)だ。2歳下の弟は、子どもの頃から成績が良く母親の自慢の息子だった。一方で、弟と父親は昔から折り合いが悪かったという。
「母は弟を溺愛していました。お弁当も弟の分だけを作り、私の分はなし。なんでも弟を優先するので、父も面白くなかったと思います」
弟は母親の望んだ国立の難関大学を卒業して大企業に就職したものの、数ヵ月で退職。転職した会社も1年で辞め、無職の状態で実家に戻った。
「仕事を辞めた理由は知りませんが、弟はプライドが高いところがあるので人間関係で躓いたのでしょう。ちょうど父も体調を崩して会社を早期退職していたので、都内のマンションで両親と弟が一日中顔を突き合わせることになって。弟と父の衝突が絶えず、母はいつも一方的に弟の味方をするため、さらに父の怒りに火をつけたようです」
早くから家を出ていた中野さんは、父からの報告を通じて実家の様子を案じていた。結局、些細なことで父子は大喧嘩になり、弟は家を出る。さらに数年後、母親が病気で急逝したとき、弟は葬式にも現れず消息不明。そして何年か経ったある日、突然かかってきたのが冒頭の電話だった。