「私が駆けつけると、弟は『ありがとう』と言って涙を流しました。半身麻痺でリハビリを含め退院まで半年、それ以降はどうするのか心配です。父と一緒に、弟の部屋を整理しに行って驚きました。

四畳の狭いワンルームに、おびただしい数の骨董品、標本類など足の踏み場もない異様な空間。弟は母にレールを敷かれて一流大学から大企業へ進んだけれど、挫折したあとは自分の世界に閉じこもってしまったのだなと思いました」

さらに、弟の部屋にあった預金通帳を調べると、亡くなる直前まで母が弟に多額の仕送りをしていたことが発覚。母の死後は、派遣やアルバイトなどをしてぎりぎりの生活だったようだ。

精神的ダメージのせいか、今度は、入院中の病院から、弟が自殺を図ったと連絡があった。幸い未遂で済んだものの、以来、弟はうつ状態になり、一切口をきかなくなってしまった。

「気が小さいので周りに迷惑をかけたことや、将来を悲観したのだと思います。数ヵ月前に退院し、いまは生活保護を受給して一人暮らし。電話をかけても出ないし、訪ねて行っても会ってくれない。

『父はあんなヤツ放っておけ』と言うんですが、心配なので私がときどき部屋の外から洗濯物が干してあるのを見て、生存確認しています。 弟と父は相変わらず断絶状態。二人とも意地っ張りなところは似ているのかもしれません」

父親はいま85歳。今後、父が要介護状態になったら自分一人で面倒をみる覚悟はあると中野さんは言う。だがもしも将来、弟に介護が必要になったら?

「いまも半身麻痺で、一人でやっていくのは大変なはず。大きな経済支援はできませんが、弟の身の回りの世話ぐらいはしてあげたいと思っています」

 


《ルポ》自立しないきょうだい、将来は誰がサポートする?
【1】引きこもりの義弟に、生活費を渡す夫
【2】母の仕送りも0円に。半身不随の弟の未来は
【3】未婚の姉のために親が画策していたこと