左から、精神科医の斎藤環さんとエッセイストの酒井順子さん(Zoomにて対談)
友人と気軽に食事や外出を楽しむ機会が、コロナ禍により激減しています。「人と会うのはあまり得意ではない」という酒井順子さんが、「ひきこもり」の治療・支援を行っている精神科医の斎藤環さんに、いま改めて「人と会うこと」の意味を問いかけてみると──(構成=篠藤ゆり)

マスクがあるとかえって安心な人も

酒井 コロナ下で、私も含めて人付き合いの仕方が変化しています。斎藤さんとも、しばらくお会いできていなかったですしね。斎藤さんは『なぜ人に会うのはつらいのか』(佐藤優さんとの共著)という本を出されましたが、私も人と会うのはあまり得意ではないので、すぐ手に取りたくなりました。

斎藤 意外ですね。

酒井 私のほうは、斎藤さんにそういう傾向があると知って意外でした。人に会うのがそれほど好きではないという自覚は、以前からお持ちだったんですか?

斎藤 いえ、コロナ禍になってからです。患者さんに限らず、コロナの流行以降メンタルの調子が悪くなる人がまわりに多くいまして。そういう方々は、頻繁に人と会って会食などをしないとうつっぽくなったり不安になったりするらしい、と気づき、自分とは違うなと改めて感じた次第です。

酒井 確かに、人に会えなくなって落ち込むタイプと、「会わずに済んでラッキー」と思うタイプの2パターンがありますね。私は後者で、予定が次々と中止になることに対してちょっとした幸せを感じたりもして、いままでは無理していたんだなあと気づきました(笑)。斎藤さんが「人に会う耐性が低い人」と書いていましたが、まさにそれかと。