境界線を踏み越え合うことで話は進む
酒井 私は、人と2人で会うのは平気なのですが、3人以上だと急に負担に感じます。人数が増えるにつれ、相手が〈人間〉というよりも〈世間様〉になってしまう気がしまして。
斎藤 なるほど。リモート(インターネットを介してのやりとり)はどうですか?
酒井 今日もそうですが、リモートは大丈夫です。このまま定着してくれると楽なんですけどね。
斎藤 そうですね。でも、多くの企業は対面業務に戻りつつあるようです。確かに、交渉や打ち合わせは対面のほうが話が早いのは事実。それは、自分と他人の境界線を踏み越え合うことで話が進むからです。私はそれを〈対面の暴力性〉と定義しています。裏を返すと、人に会うと自分の思い通りの展開にならない場合も多い。だから、会うことを〈しんどい〉と感じる人もいるわけですね。
酒井 1人でいる時の穏やかさは、確かに打ち破られます。
斎藤 暴力と聞くとネガティブに感じるかもしれませんが、そうではありません。社会が回っていくための手段であり、避けられないことです。
酒井 お互いの領域を侵したり侵されたりすることによって、わかり合えたり、得るものもいっぱいある、ということですよね。