実現が難しい理想をわが子たちに望むのは《親のエゴ》

Bを選ぶ方は「家族とは仲良くするものだ」という固定観念がどこかにあるのかもしれませんね。もちろん、家族仲がいいのは理想的ですし、そうありたい気持ちはわかります。年を重ねて、わが子たちがそれぞれの家族を連れて実家に集まり、大家族で団らんできたら嬉しいことでしょう。

けれど、先に申し上げた通り、家族はたましいの学校です。気の合わない同級生がいたとしても致し方のないこと。生き方や個性が違うたましいが集っていると思えば、同級生全員がずっと仲良しでいるほうがむしろ珍しいと言えるのではないでしょうか。自分に置き換えて考えてみてください。子ども時代の友人たち、誰一人欠けることなく今も仲良くしているという方はいないと思います。それと同じです。

(イラスト◎大野舞)

自分でも実現が難しい理想をわが子たちに望むのは、厳しいようですが、《親のエゴ》と言わざるをえません。大人になって、仕事を持ったり、配偶者を得たりすれば、生活スタイルや価値観は変わります。子どもの頃は仲が良くても、大人になってきょうだい同士の気が合わなくなることは十分にありうるのです。親が取り持って子どもたちの仲が改善するならいいですが、親の気持ちを察知した優しい子どもたちが、親の前でだけムリをして仲良し家族を演じることもあるでしょう。それは真の幸せではないと思うのです。

正直なところ、独立してそれぞれの人生を歩み、滅多に会うこともなくなった子どもたちが不仲でも、どうということはありません。問題があるとすれば、親である自分がわが子たちに仲良くしてほしい理由です。親類縁者への体面を保つため? 子どもたちの仲がいいほうが、自分に何かあったとき協力して面倒をみてもらえるから? 自分の死後に相続で揉めないように? それとも自分が家族の温かみを感じたいからでしょうか。冷たいようですが、どれも自己中心的な理由に思えます。子どもがいようがいまいが、自立して孤高に生きる。介護費用は自分で準備しておく。相続問題だって、公的な遺言書を用意しておけば揉めごとは大幅に減らせます。究極、子どもはいないと思って老後の準備をしておけば、たいていの気がかりは減るはずです。