高田馬場駅から見える「ともしび」の看板
お客が声を合わせて店内で歌う「歌声喫茶」は、1955年前後、東京などの都市部で流行。多くの若者が集い、ロシア民謡、労働歌、反戦歌、歌謡曲、童謡などが歌われた。その後ブームが去り、ほとんどの店が閉店していく中、新宿の「うたごえ喫茶 ともしび」は多くのファンに支えられ繁盛していたが、コロナ禍で閉店を余儀なくされる。歴史の灯を消さないよう、再開に向けて奔走していた人々の熱意で、2022年11月22日に場所を移して再オープンすることが決定した。2年間の思いを、ともしびのメンバーや、かかわりの深いコーラスグループ、「ベイビーブー」に聞いた。(撮影◎本社 奥西義和)

「歌声喫茶ともしび」として営業再開

新宿の地でファンに愛された「うたごえ喫茶ともしび」が新天地・東京高田馬場駅近くに場所を移して、「歌声喫茶ともしび」として生まれ変わり、営業を再開するという。

「本当に長らくお待たせしました。ようやく再開できることになってほっとしています」と語るのは店長の齊藤隆さん。オープン前夜、スタッフたちが慌ただしく準備を急ぐ中、その表情は明るい。

「歌声喫茶は新型コロナウイルスとの相性は最悪ですよ。狭い店内で隣の人と肩をふれあいながら、大声で歌を歌って、食べて飲んで心地よくなるんですから、もう手も足も出ない状態です」という齊藤さんたちは、2年前の緊急事態宣言でいったん休店。

夏からは70人の定員を20人に減らして、昼の2時間だけ限定して営業を再開したものの、やはり立ちゆかなくなり、みんなで話し合った結果、9月にはいったん店を閉めるという苦渋の決断をする。齊藤さんは「68年の歴史を持つ〈ともしび〉の灯をこんな形で消すことになるなんて、考えもしなかった。重い責任を感じていました」と話す。

店長の齊藤隆さん。ピアニストでもある