昨年、五島さんの治療によって、胃ろうから普通食に復帰した都内豊島区在住の市村敏郎さん(75歳・仮名)の妻、佳世さん(仮名)に話を聞いた。
「夫は一昨年に脳梗塞で倒れて半身マヒになり、急性期病院から3週間ぐらいでリハビリ病院へ移りました。ところがそこで誤嚥性肺炎を1、2回起こして。口から食べてはいけないと言われ、鼻からチューブを通す経管栄養に。経管だけでは十分な栄養が摂れないので胃ろうを作ることになりました」
結局、胃ろうのまま退院したが、担当医は「将来的には普通食に戻れる可能性もゼロではない」と曖昧に言うのみ。そこで「胃ろうの人も訓練で口から食べられるようになる」という触れ込みの大学病院にも3ヵ月ほど通ってみたが、はかばかしい変化は見られなかった。
「大学病院では検査、検査で、行くたびに『まだ口から食べるのは無理』と言われるんです。これでは埒が明かないと、ケアマネさんに教えていただいた五島先生にお電話をしました。区が違うので夫を車で連れて行っていいですかとお尋ねしたら、先生は『いや、こちらから訪問しますよ』と言ってすぐに来てくださって」
夏の暑い日。リュックを背負って汗だくになり、電車に乗って一人でやってきた五島先生の姿に市村さん夫妻は驚いた。
「てっきり看護師さんとお車でみえると思っていたんです。先生は夫の口内と全身状態を診てから、『口から食べられるようになりますよ』と、その場で断言してくださいました。夫と2人で大喜びし、その夜は、食べられるようになったらどこに行って何を食べようかと相談したのを覚えています」と佳世さん。