数日後、庭に出て隣家に目を向けると、細い路地をあの三毛猫が力なく歩いている。すぐ後ろを子猫1匹だけがついて行く。三毛猫は地べたにへたり込み、子猫がおっぱいに吸い付く。まったく出そうにないのに懸命に前足で揉み続ける。

「おい、ご飯食べるか」

思わず声をかけていた。三毛猫はすがるような目で私を見る。かつお節をたっぷりまぶしたご飯を器に盛ってやると、ひと息に食べた後、背中を大きく波打たせて吐いた。その汚物を食べ始める子猫。私の顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった。

翌々日、三毛猫は子猫3匹を連れてやってきた。こうして猫たちとの同居生活が始まった。

猫たちにはそれぞれ名前をつけた。親猫は額の右側に黒い点が「チョコン」とあったので、わが家の招き猫になってほしいという願いを込め、「チョコン+招き猫」で「チョコまね」とした。

チョコまねは、私や母に対して気の毒なくらい気を使った。爪を立てたりすることはなく、撫でてもらいたくても自分からアピールしないで、ひたすら待ち続ける。反面、横綱級のやきもちやきだった。子猫たちばかり構っていると面白くないらしい。それでも私には当たらず、子猫に当たる。それも私の目を盗んで攻撃するのだった。