9年も一緒に暮らしたのになぜこんな仕打ちを……

同居して9年が経った頃、チョコまねは頻繁に外泊するようになった。外泊先は、わが家から200メートルほど離れた家。そこの庭から動かないチョコまねに、私は「帰ろう」と懇願した。

以前からこの家近くの空き地でよく遊んでいたが、呼びに行くと大抵出てきた。そして私が撫でて「おいで」と言うと、後について帰ったのだ。

しかし、この年は違った。私が撫でるところまでは同じだが、後をついてこない。無理に抱いて連れ帰ると、唸って出て行ってしまう。餌を与えても食べないこともあった。なぜだろうと思っていたが、この家で餌をもらっているとわかった。

この家の息子は私より2歳年下で、高校生の頃から30年以上引きこもり、母親と2人で暮らしている。庭で彼を見かけた時、私は事情を話し、猫に餌を与えないでくれと頼んだ。頼りない返事しか戻ってこないので、母親にもお願いした。すると、「息子はあの猫をとてもかわいがっているんだよ」と、思いがけない返答。

その後も諦めきれず、何度もチョコまねを連れ戻しに行ったけれど、私の姿を見ると一目散に逃げてしまうように。呼びに行くたび惨めになった。

もうやめよう。チョコまねはあの息子を慕っている。私は捨てられたのだ。それにしても、9年も一緒に暮らしたのに、この仕打ちはないだろう。ショックは大きく、しばらく立ち直れなかった。