相続に関する民法(相続法)が改正され、順次施行されます。夫に先立たれた妻や、親族を介護した人に関する新しい制度など、気になるポイントについてFPの一橋香織さんに解説してもらいました。(構成=山田真理)
「もめない相続」のために知っておきたいこと
今回のような大幅な民法改正は、1980年以来、約40年ぶりのことです。この間に、少子高齢化が進み、旧来の家族のあり方や、家族に対する考え方も変わってきました。このような社会情勢の変化に対応し、改正の項目は多岐にわたります。
なかでも注目されているのが、配偶者が亡くなって残された妻(夫)の生活に配慮した制度が新たに設けられている点です。ほかにも、被相続人の介護を行った相続権のない親族(長男の妻など)が見返りを得られる制度や、亡くなった人の口座から葬儀代などに使うためのまとまったお金を仮払いできる制度、自筆証書遺言が作りやすくなる制度などが、2019年7月から施行されます。
改正によって不便が解消され、弱い立場の人が法的に守られるのは大きなメリットです。しかし、相続診断士として3000件以上の相続に関わってきた私から見ると、今回改正された制度は、使い方によってはデメリットも多いように思います。
特に私は「もめない相続」をモットーに活動してきたので、「この制度を使ったら、かえって相続人同士がもめるケースが増えるのでは」と心配しているのです。