制度を利用することで深刻なトラブルに?

たとえば、あらたに創設された「配偶者居住権」は、被相続人の持ち家だった自宅に、配偶者が一定期間あるいは終身にわたって住み続ける権利です。

しかしこの制度を利用しなくても、両親が住んでいた実家に「お母さんがそのまま住めばいい」と考える子どもは多いのではないでしょうか。むしろ制度を利用することで、親子関係がギスギスしてしまうかもしれません。そのほかの制度も使い方によっては深刻なトラブルを引き起こす恐れがあります。

司法統計によると、2017年に家庭裁判所に持ち込まれた「遺産分割調停事件」の数は1万4044件。これは調停が必要だったケースですから、調停にいたらない小さなトラブルの件数は、はるかに多いでしょう。私の経験では、相続について正しい知識がなく、準備をしていない家庭ほどトラブルを抱えやすいように感じます。

次回から、今回の改正により相続にどのような変化があるか、また制度のメリットとデメリットについて解説します。