相続に関する民法(相続法)が改正され、順次施行されます。夫に先立たれた妻や、親族を介護した人に関する新しい制度など、気になるポイントについてFPの一橋香織さんに解説してもらいました。今回は、夫と死別した妻の住まいについてです。(構成=山田真理)
Q. 夫と死別した妻の住まいはどうなる?

⇒「配偶者居住権」の相続、「自宅の生前贈与」で備える

***

住み慣れた家で死ぬまで暮らすには

夫が亡くなり、妻と子に相続が発生すると、妻は法定相続分として財産の2分の1を、子どもは残りの2分の1を人数に応じて受け継ぐことができます。

しかし主な財産が妻の現在住んでいる自宅で、現金が少ない場合はやっかいです。「家を現金化して分けよう」と、子どもが母親に自宅の売却を迫ることが考えられます。あるいは、家は妻が相続したものの、手元に現金が残らずに生活が困窮してしまうというケースもありました。

こうした事態を是正しようと考えられたのが、「配偶者居住権」。これは、亡くなった被相続人(夫)の持ち家に住んでいた配偶者(妻)が、終身あるいは一定期間、その家に住むことができる権利です。

持ち家についての権利を「配偶者居住権」と「(居住権のない)負担付き所有権」に分けて、遺産分割のときに妻が前者を、子どもなどほかの相続人が後者を取得できるようになります。(2020年4月1日に施行予定)