子どもの側には負担が大きく
なお、「配偶者居住権」を持てば自宅に住み続けられますが、自由に売却したり賃貸に出したりすることはできません。そのぶん評価額は低く抑えられ、妻は相続のときに預貯金などほかの財産をより多く取得できるという仕組みです。
この制度ができた背景として、時代の変化にともない、離婚や再婚が増えて「血縁関係のない親子」が関係する相続が今後増加するといった事情もあるでしょう。
たとえば前ページの図のように、亡くなった夫は再婚で、後妻と先妻の子どもとで財産を分ける場合。お互いの関係が良好ならばいいのですが、後妻が今後の生活に困る遺産分割になりそうな場合、配偶者居住権を取得するのは有効な手段になると思われます。
このように妻の側にはメリットのある配偶者居住権ですが、子どもの側には負担が大きいというデメリットがあることもぜひ覚えておいてください。
第一に、子どもが相続できる現金が少なくなってしまうこと。妻に多く現金が渡ることで子どもの取り分は減りますし、所有権があるといっても、妻が亡くなるまでは(配偶者居住権の期間を10年、20年などに定めることも可能ですが)売ったり貸したりして現金化することはできません。
第二に、相続税だけでなく、毎年の固定資産税も所有権を持つ子どもが負担することになります。