残されたUSBメモリのなかにあったのは……(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは神奈川県の70代の女性からのお便り。3ヵ月前に亡くなった夫が残したUSBメモリの中にあったのは――。

お見合いの思い出

夫が亡くなって3ヵ月。残されたUSBメモリのなかに自伝のような文章を見つけた。「知られざる技術者が歩いた道」と記された文章には、自身の生い立ちから孫の誕生のことまでつづられていた。私の知らない、会社での現役時代の逆境のことも。

私は、夫にとって7回目の見合い相手だった。文章には、なぜ私に決めたのかは書いていなかった。初めて会ったとき、私は二人の間に流れる沈黙がいやだったので、好きな三島由紀夫の本のことを延々と話した記憶がある(たしか、三島が割腹自殺したのは、その1ヵ月後だった)。

夫は、自分がおしゃべりしなくてすんだから、私を選んだのかしら。真相はいまとなってはわからない。

時間の経過とともに、夫のいない、一人の暮らしに慣れていくのかな。私の年金生活の収支は、40年以上つけてきた家計簿のおかげで予算内に収まっている。毎日の献立も散歩コースもいつも通り。

そして、ほぼ一日中、夫の書斎の机で本を読み、ラジオを聴いて過ごす。『婦人公論』は私のこの先の生活の指針になっている。


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