時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは70代の池田悦子さんからのお便り。15年来の大切な友人を最近失ったという池田さん。大きな衝撃を受けたという、友人の「生き方」とは――。
友人は大好きな家で病と闘っていた
私の大事な友は、さよならも言わずに、旅立ってしまった。15年前に出会い、あっと言う間に意気投合してからずっとつきあいが続いていた。
私は小さな町で、梨や野菜を作っている。彼女は看護師で大病院に勤めていたが、定年退職。梨やスイカを送るたびに、「届いたよ! おいしい」と喜び、お返しに菓子とコーヒーを送ってくれた。そのうちに彼女の家に泊まりがけで出かけ、夫婦で四国や岡山へ旅をするように。だがこの2年間は、コロナという壁のせいで会うことができなかった。
私は、彼女ががんと闘っていたなんて知らなかった。これが最後のやりとりになるとは夢にも思わず、梨と栗を送った私。彼女はいつも通り「届いたよ! おいしい」と言っていたのに! 10日後に、彼女はこの世を去った。
いつ命がつきるともしれないとわかっていながら――。こんな生き方があるということを知って、私は大きな衝撃を受けた。入院をすることなく大好きな家でご主人と二人で病と闘っていたのだ。
いま彼女の遺品を見つめながら、友を失った悲しみをしたためている。またいつか会えたら、たくさんの報告ができるよう、もうしばらく生きてみたいと思う。