仕事の目玉は、母体の生協が展開するサービスで、買い物を代行しお届けする、通称「おつかいさん」だ。メンバーはその配達を担っている。総勢18名のほぼ全員が、毎月1回は参加しているという。
「車の運転以外はメンバーさんが主体で、配達先で呼び鈴を鳴らし、お客さんと会話を交わして、荷物をお渡しします。お互いに高齢者だと話も合う。力の弱いお婆ちゃんの家で、玄関に大荷物を置かれても困るだろうと、冷蔵庫まで品物を運んであげるメンバーさんもいます。
そのうち自分たちの役割として実感し始めたようで、『俺らが届けないで誰が行くんだ』『私たちが行かないと、あの人たちが困る』と声があがった時には驚きました」
そう語る渡辺さんが一番印象に残ったのは、「人の出会いにはお金に換えられない価値がある」というメンバーの言葉だ。
認知症になっても、豊かな感情と尊厳を持った一人の人間であり続けることに変わりはない。人生100年の時代にあって、こうした取り組みが社会の風景を変えていくのだろう。