オーナーシェフの市川貴章さんを除くと、4人のスタッフはすべて認知症と診断された人たちだ。(写真提供:ちばる食堂)
認知症になったら、仕事や社会活動からは遠ざかるしかない――そんな古いイメージが塗り替えられつつある。たとえ症状があっても、尊厳を持って生き生きと働ける。新たな試みを進める場所を訪ねてみた

雇用条件は、認知症であること――ちばる食堂

愛知県岡崎市に、沖縄そばを食べさせてくれるユニークな食堂「ちばる食堂」がある。オーナーシェフの市川貴章さんを除くと、4人のスタッフはすべて認知症と診断された人たちだ。しかし店内のどこにもそうした説明書きはない。

「初めてのお客さんはスタッフの応対に戸惑うこともあるけれど、食べ終わる頃にはそんなの気にしなくなってしまう。むしろスタッフと仲良くなって、彼らと会うのを目当てに通ってくれる常連さんが多いですね」

そう話す市川さんは、介護福祉士という顔も持つ。地元の介護施設で17年間働いたあと、2019年に独立してこの店を開いた。

きっかけとなったのは、認知症当事者が従業員となる「注文をまちがえる料理店」という東京で行われたイベント。それを見た市川さんは、要介護者でも「働く」という選択肢があることに気づいた。