認知症になったら、仕事や社会活動からは遠ざかるしかない――そんな古いイメージが塗り替えられつつある。たとえ症状があっても、尊厳を持って生き生きと働ける。新たな試みを進める場所を訪ねてみた(写真提供:BLG丹南)
高齢者が高齢者を支えるしくみ――100BLG
「sitte」や「ちばる食堂」に先がけて、全国でもいち早く、2012年から「認知症当事者の社会参加」に取り組んでいるのが、東京都町田市の通所介護施設「DAYS BLG!(デイズ・ビーエルジー)」だ。19年からは100BLG株式会社(以下、BLG)を立ち上げ、全国規模で活動している。
「もともとはDAYS BLG!に通っている方が『自分はまだ働けるし、働きたい』とおっしゃったのがきっかけでした。しかし市や都に問い合わせても、前例がない、と。
最終的には国に働きかけ、厚生労働省にも通ってようやく、デイサービスに通いながらでも『有償ボランティア』として活動できるようになりました」と語るのは、BLG取締役の平田知弘さん。
BLGでの基本は、一日の過ごし方や食べるものを自分自身で選択できること。そして「介護する側・される側」が分け隔てなく一体となり、できないことをできる人が助け合いながら過ごすことだ。だからBLGでは施設職員も利用者も同じ「メンバーさん」と呼ばれる。
「実は我々が大事にしているのは、働いて収入を得ることではありません。認知症の方でよく聞くのは、診断された途端、年賀状が来なくなったとか、家族との関係性が変わってしまったとか。今までの『社会』から切り離されてしまうのです。
しかし、仕事を通じて社会や地域と関わり、仲間ができれば、自分の悩みを語り合えるかもしれない。そういう場を作りたかったのです」と平田さん。