慌てず騒がず落ち着いて

最近はまっているインスタント味噌汁の詰め放題でも出会いがあった。「2日間限定、当店指定の袋に限る。目安としては15個入ります」とスーパーの広告。値段は1000円だ。実物を見に行くと、ワゴンにさまざまな種類の味噌汁が山盛りになっている。

豆腐、なめこ、あおさといった定番から、こってりした揚げ茄子、豚汁まで。1個100円くらいの商品だから、これはお得だ。

好きな種類を好きなだけ詰めていいのだが、袋が破れやすいため慎重にならざるをえない。時間制限があるわけではないから、慌てず騒がず落ち着いて、が勝利への道だ。欲張るのではなく、勉強させていただく謙虚さも大事。目標は控えめに。目安通りの15個を狙おう。平常心、平常心。

袋の端から端まで整然と、スペースを残すことなく詰めると、15個はどうにか入った。それだけではお得感が足りないので、せめて18個は行きたい。成功した瞬間、「よし、完成!」と声に出る。

すると、隣で苦戦していた定年退職後風の男性に「何個入った?」と聞かれた。18個と伝えると、「教えて!」となり、攻略法をレクチャー。細かく解説するうちに考えがまとまり、洗練されてきた。もっと行けそうな気がする。

その男性は、勢い余って袋が破けてしまったようだ。しかし、すぐに新しい袋を持ってきて詰め始めた。「おじさん、頑張ってね!」とエールを送って去る。一期一会の出会い。その後は知らない。

翌日、もう一度挑戦するとなんと24個まで記録を更新した。「情けは人の為ならず」は本当だったのだ。

そうして手に入れた戦利品を一つ一つ味わう瞬間がたまらない。ひとり暮らしなので、独占できるのも嬉しい。私にとって詰め放題は、「お得」以上の価値のある存在なのだ。

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