気を取り直して作業を続け、結局18枚のクッキーを手に入れた。その時は納得したのだが、帰宅後、もっと入ったのではないかと後悔が押し寄せてくる。ある女性は28枚を記録していた。袋からはみ出したクッキーが整然と並び、まるで花束。レジに持っていく姿も堂々としていた。私もできるはず。
後日、友人を誘って再挑戦してみた。しかし、18枚の壁は厚い。なぜだ。隣で見ていた友人は、「あなた、原価の高そうな分厚いクッキーを選ぶからじゃないの」と。思い返すと、達人は薄いものを上手に選んで詰めていた。なるほど、詰め放題は奥が深い。
詰め放題の現場では、予想もしない出会いがある。ある朝、近所のスーパーの折り込み広告に「半期に一度の決算感謝祭、揚げ物詰め放題500円!当店指定の容器に限る」の文言を見つけた。食いしん坊の血が騒ぐ。
すぐに向かうと先客がいた。還暦間近とおぼしき女性が一心不乱に揚げ物を詰めている。真剣勝負だ。ほほえましいと思えなくもないが、その詰め方が尋常ではなかった。
まず枝豆とコーンのかき揚げを1段目に並べて、その上に鶏の唐揚げを1段分入れたら、フタを被せ上からギュッと押さえる。開いて再度かき揚げと唐揚げを載せ、押さえつける。これをもう一度繰り返し、輪ゴムで容器を閉めようとしたが、なにしろ容器本来の高さの5倍分だ。輪ゴムが切れそうになっていた。
通りかかった店員さんが目を丸くして、「お客様、さすがにそれは……」と絶句。「返しましょうか?」と言う女性。「いえそれはちょっと……」。つぶれた揚げ物を前に店員さんは為す術もなく、女性は平然とレジへ向かった。あっぱれである。私もこうありたい、とは思わないけど、度胸は見習おう。