(イラスト:チームおゆき)
総務省が発表した2022年12月の消費者物価指数は、前年同月比で4.0%上昇。16ヵ月連続で上がっており、激安情報を求めて東奔西走する日々を送る人も多いはず。良いものをなるべく安く買いたいのは、消費者としての当然の願いです――。河合菜々美さん(仮名・山口県・無職・54歳)が、色々な食品の詰め放題に挑戦する中で起こったドラマとは。

どれにしよう。いくつ取ろう

私は食品の詰め放題が大好きだ。ワクワクしながら並ぶ、あの高揚感がたまらない。

初めて挑んだのは、クッキーの詰め放題だった。通常は量り売りなのだが、月に数回ある詰め放題の日は大行列。800円で、専用の袋からいくらはみ出してもかまわない。ただし、上から手やトングで支えることなくレジまで運び、店員さんに渡すのがルール。詰めている間に1枚でも取り落としたら、そこで終了だ。

ちょうどハロウィンシーズンで、カボチャや紫芋、ベリーを使った華やかなクッキーが何種類も並んでいる。

どれにしよう。いくつ取ろう。初めは浮かれていたが、順番が近づくにつれて不安になってきた。元が取れるくらい詰められるかな。手が滑ったら一巻の終わり。ドキドキする。ああドキドキする。

そのうち、私の番が巡ってきた。初心者なので、どんなコツがあるか慣れた手つきの人たちをじっくり観察。見よう見まねで詰め始めた。とにかく落とさないように、安定重視で。そっとトングでつかんで綺麗に隙間なく立てて袋に入れていたら、なんということだろう。私の目の前にいた中年女性がうっかりクッキーを1つ袋からこぼしてしまった。

私はキャーッと心の中で叫ぶ。店員さんが飛んできて「申し訳ございません。ここで終了となります」と宣告した。激しく動揺する。私のうろたえぶりが大きかったからか、すぐ後ろの娘さんから「大丈夫ですか?」と声をかけられる始末。根が小心者なのだ。