さまざまなるギャル
ひとことに「ギャル」と言っても、その系統はいくつかあるようだ。
2015年に卒業論文を受けもった高校3年生のギャル系の女子生徒は、ギャルサークルを研究のテーマとしていた。最初に「ギャルについて論文を書きたい」と言われたとき、「だったら、たとえば文化人類学的なアプローチとかならば面白いのではないか」というような返答をした。
もっとも、その答えかたには自分なりの戦略があった。というのも、すでに荒井悠介さんの『ギャルとギャル男の文化人類学』が刊行されていたこともあり、文化人類学的なフィールドワークとしてギャル研究をおこなうことはじゅうぶんに成り立つと思ったのはたしかだ。
ただ、その一方で、彼女があまり深く考えずにテーマ選びをしている危惧もあったので、「文化人類学」という高校生にはなじみのなさそうなキーワードを出すことで、ちょっと本気度をうかがうようないやらしい思惑もあった。
はたして彼女は、その後、まさに「文化人類学」的アプローチとも言えるような取材を重ね、ギャルサークルの内在的な論理を見事に記述した。というか、以前からギャルサーに参加していた彼女は、そもそもギャルサーの実態を詳しく調査するつもりだったのだ。その意味で、フィールドワークは彼女にとって望むところだった。
そんな彼女のギャルサークル研究で教えられたことが、ギャルにもいくつかの系統があるということだ。そのときのギャルと僕の卒論をめぐる会話は以下のとおり。
「私たちはどちらかと言うと、渋谷とか青山でパーティー開く系のギャルなんです」
「はあ?」
「たとえば、*組に**さんっているじゃないですか。こう言っちゃなんだけど、**さんはちょっと田舎っぽいというか」
「はあ」
詳しい違いを把握できているかわからないけど、「**さん」というのは浅黒い肌をした女子生徒。たぶん肌は人工的に焼いていて、髪の毛には白とピンクのエクステを付けていた。対して、ギャル研究をおこなった生徒は、白い肌に目の輪郭を強調したバキバキの化粧。たしかに同じギャルでも系統が異なる気がする。
その女子生徒のギャル研究は最終的になかなか良い論文に仕上がって、高評価を付けた覚えがある。その後、大学4年生となったとき大手化粧会社に内定が決まったことを報告しに来てくれた。これも勝手なイメージで言うが、優秀だったしなんかけっこうビジネス界で出世しそうな感じがする。