矢野さんいわく、人生において大事なことを教えてくれたのはギャルだったそうで――(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
授業に部活動、教員に生徒…。さまざまな要素で構成される学校とは、生徒と教員がそれぞれの身体でもって生きる場所であり、そんな躍動的な学校の姿を活写したいと話すのが現役の国語教員で批評家の矢野利裕さんだ。その矢野さんいわく、人生において大事なことを教えてくれたのはギャルだったそうで――。

大事なことはだいたいギャルに教わった

自己嫌悪したくなるのであまり思い出したくないが、中学生のとき、ずいぶん調子に乗って友人たちに軽口を叩いていたことがあった。ダウンタウンの松本人志さんに入れ込んでいたからでもあるけど、松ちゃんほどのセンスもやさしさもなく、ひたすらに痛々しくて周囲からも嫌がられていたと思う。

そんな僕をたしなめてくれたのは、友人のギャルだった。森田剛と安室奈美恵とスパイス・ガールズをこよなく愛し、ふだんはチャラいことばかり口にしている彼女は、僕の悪質な冗談に対しておそらく心から呆れ、怒り、だからこそ真摯に、「ああいうことはやめたほうがいいと思う」と真正面から言ってくれた。

このとき、なんというか、自分は粋がっていただけでなんとガキなのか、ということを思い知った。同じ地域に住んで同じ学校に通っているはずなのに、なぜあんなにも精神的に大人だったのか。

その後、僕が大学生のときに偶然近所で彼女と会ったことがあったが、そのときにはすでに一児の母となっており、「20代は子育てに捧げることに決めた」と言っていた。

サブカルと自意識にまみれた当時の自分と比べて、なんて大人なのだろう! 人生において大事なことを教えてくれるのは、おうおうにしてギャルだという思いがある。

非常勤講師の1年目、授業をもった高校3年生の選択授業クラスにギャルの一群がいた。髪色が明るく声は大きめ。そのうちのひとりのことをよく覚えているけど、その生徒は、勉強に対する意欲はあまりないがゴキゲンに学校生活を過ごしているような生徒だった。

退屈な内容だったのだろう、授業はけっこう寝られた記憶があるけど、彼女に対しては別に悪印象があるわけでもなく、勉強以外の会話もそれなりに楽しくしていた覚えもある。というか、ナメられていた可能性がかなりある。