元旦のクレイマー

12月の半ばには台所のコンロを入れ替えた(なくしてない)。

ずっと調子が悪かった。どんどんどんどん悪くなり、火が点けられなくなり、ついにライターで点けるようになり、ライターだと熱いし怖いから、柄の長い仏壇用のライターを買ってきて、それで点火しながら、昔はこんな便利なものもなくてマッチだったなあと思い出しながら使っていたのだ。30年物なのであちこちがボロボロに錆び落ちていたりした。

「うちももう数年前に取り替えたよ」とやっぱり30年前から住んでる隣人が言うので買い換えようと思い始めたが、コンロなんて買ったことなかったから買い方がわからない。いろいろ探してメーカーのHPにたどりついて、とうとう新機種の新コンロ、コンピュータ機能のなるべく少ない、小ざっぱりとシンプルなやつにした。古いのは4口だったが今度は3口。今はそれで充分なのだ。

30年前に新品だった前のコンロに比べると、新しいコンロはSFみたいに進化している。ぴかぴかだし掃除もしやすい。タイマーもついてるから焦がすこともない。でもタイマー機能をセットしないとやっぱり焦がす。新しいコンロでさっそくゆで卵を焦がした。

そんなことを隣人と話していたら、「もしかしたら電池切れのせいかもしれない」と言われた。「電池を替えれば点いたのかもしれないよ」と。

あー。うー。電池切れかもしれないし、電池切れじゃないかもしれない。あー。うー。もう考えないことにする。

年の瀬の押し詰まった頃には、車の鍵をなくした。補聴器をなくしたときどさくさに紛れてスペアキーをなくしたのは、さっき言いましたね。つまり一つしか残ってないその一つだ。車は駐車場に入れてロックして家に入ったわけだから、鍵は家の中でなくなったとしか考えられない。突然ぱっとなくなった。完全犯罪というやつだ。

困った。なにしろ年の瀬である。あと一日二日で店という店はぜんぶ閉まる。じたばたしていたら、行きつけの中古車屋さんが個人営業の鍵屋さんを紹介してくれた。「明日行けます。スマートキーなのでお代は7万」ということで息を飲んだが、断る選択肢はどこにもない。

なんでも開けてどんな鍵も作れる。裏街道を行ったらどんなに儲かるかと思ったが、来てくれた人を見たら、あえて表街道を行くさわやかな若者だった。この技能は学校で教わるものではなく、鍵屋に奉公してしだいに覚えるものだと言っていた。