カノープスが見えた!今シーズンはじめて

それからもいろんなことがあった。別の機会にまた話す。今話したいのはそれから10日後のことだ。新年明けて、明けましてという記憶がまだ生々しい頃。あたしはまた車の鍵をなくした。

出先で落としたとか置き忘れたとかいうのではない。家の中でぱっと消えた。もうこうなると家の中に「物隠し」とか「鍵喰らい」とかいう妖怪が棲みついてるとしか考えられない。

アレもなくしたコレもなくしたと、Twitterでつぶやいていたら、知らない人からエアタグというものの存在を教えてもらった。すぐ買った。

鍼に行って、先生(この人はちょっと仙人じみた異能の人なんである)の奥さん(この人も見透す力のある魔女のような人なんである)に、アレもなくしたコレもなくしたと話していたら、奥さんがふと真顔になり、「人が亡くなるときは物もなくなるよ。しかたがないのよ」と言った。

奥さんはクリスマスの朝に亡くなった渡辺京二さんのことを言ってたのだが、去年死んだ人が何人もいる、今年死ぬ人もいる、死にそうだと気がかりでたまらない人もいる、みんながあたしのまわりに集まって、鍵やら何やら大切なものを持っていこうとしてるんじゃないかと思えた。しかし何のために?


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米国人の夫の看取り、20余年住んだカリフォルニアから熊本に拠点を移したあたしの新たな生活が始まった。

週1回上京し大学で教える日々は多忙を極め、愛用するのはコンビニとサイゼリヤ。自宅には愛犬と植物の鉢植え多数。そこへ猫二匹までもが加わって……。襲い来るのは台風にコロナ。老いゆく体は悲鳴をあげる。一人の暮らしの自由と寂寥、60代もいよいよ半ばの体感を、小気味よく直截に書き記す、これぞ女たちのための〈言葉の道しるべ〉。