高尾先生いわく、男女間だけでなく世代によっても「生理」や「更年期」の知識に差があるそうで――(写真提供:Photo AC)
女性の身体に起こる「生理」について、男性が知る意味とは?女性の生理について社会的に取り組むことは、女性優遇なのか?漫才コンビ博多華丸・大吉の博多大吉さんと、NHK「あさイチ」でもおなじみの産婦人科医・高尾美穂先生が「生理」をテーマに語りあいました。高尾先生いわく、職場では他者に対する想像力を働かせることが、チーム力の向上につながるそうで――。

身近にいる人への想像力が、チーム力を上げる

大吉 高尾先生が企業に出向いて行っている、女性特有の健康課題についての研修の対象は管理職……ずばり“オジサン”ですか? ぼくが生理について知らなかったように、50代から上の世代はまず生理についての知識がないだろうと思うのですが。

高尾 そんなことないですよ、当事者の女性向けの研修が最も多いです。実は当事者もわかっていないことが多いんです。まずは自分について知らないと、自分の働き方も見えてきませんよね。

そして女性も、世代が違う女性のことは案外知らないものです。上の世代はいまの時代の生理、妊活、妊娠出産についてアップデートしてもらって、下の世代には更年期のことを知ってもらう。

ちょうど管理職と部下の関係にある女性同士のあいだで、「知らない」という理由からすれ違いやトラブルが起きることもあります。知ってさえいれば、避けられるであろうトラブルです。

もちろん、管理職に就いている男性や、大吉さんがおっしゃるところのオジサン世代に向けても研修します。

ここで私が伝えたいのは、生理や更年期の仕組み、それからいまどきの妊活事情といったディテールではなく、女性には身体のことが理由で「休みを取りたい」日があるということ。

以前、大吉さんと“生理休暇”という言葉じゃないほうがいいよね、というお話をしましたが……。

大吉 休暇って言葉だと、「なぜ休むのか」をはっきりさせたくなるように思うんです。仕事を休んで楽しいことをしようとしているじゃないか、と勘ぐってしまう。

高尾 正当な手続きを経て休むのなら、楽しいことで休むのでも報告する必要はないですけどね。

私が伝えたいのもまさに大吉さんがおっしゃったとおりで、1日なり半日なり自分の身体のために時間を使うことを“休暇”というなら、その理由を会社が把握しておく必要はないということです。

女性の調子が悪そうだったら「生理かPMS(月経前症候群。生理数日前に始まる、さまざまな不調のこと)なのかな」、結婚して何年かのあいだなら「もしかしたら妊活しているのかもしれない」、40代半ばぐらいであれば「更年期の症状がつらいのだろうか」と想像力を働かせてほしいと思うんです。

私が研修で男性にお伝えするのは、想像するための材料となる知識です。

相手が何に困っているのか、何を必要としているのかをイメージできないかぎり、その人のために動けませんよね。