名前を覚えない小さん師匠が

第二の転機はやはり超スピードの真打ち昇進ということだろうか。前座のころに寄席で太鼓を叩いたり笛を吹いたりするところを先代柳家小さん師匠がじっと見ていた、という話もある。

――小さん師匠はね、前座の名前を覚えないんで有名な方だったんですよ。で、僕が太鼓叩いてるとずうっと小さん師匠が楽屋で見てて、あれどこの弟子だ? ってなって。

しばらくして僕は今度、笛を吹いてたんです。あれ誰だ? 小朝か。あいつ笛も吹くのか、ってなって、完全に僕の名前が頭に入ったんです。

そのあとNHKの新人落語コンクールで僕は優勝するんですけど、その審査委員長が小さん師匠だったんですね。そんなことがあって、落語協会の理事会で、談志師匠や円楽師匠が小朝を抜擢で真打ちにしたらどうか、ってなったときに、当時の会長が小さん師匠で、師匠がそこでNOと言ったらもう完全にダメなんですけど、幸いGOを出してくれたんですよね。

しかし僕の6年間の前座のころはよく売れて、スケジュール帳が真っ黒だったんですね。それが二ツ目になった途端、パタッと仕事が来ないんですよ。

で、先輩に訊いたら、二ツ目になればギャラが上がる。同じギャラなら一番下のお前よりベテランに頼むに決まってるじゃないか、って。