僕の第二の転機
で、次の年の春に上野の本牧亭で独演会をやることにしたんです。ここは畳敷きの昔風の寄席で、席が指定できないから前売りができない。
落語雑誌と当時の『ぴあ』にちょっと載せたくらいで、当日、どうかなぁと思って行ってみたら、長い行列ができている。これは何だろうと思ったら僕の会だったんですね。
本牧亭の一番の記録って、山田五十鈴先生が浮世節の名人、の舞台衣装をつけて『たぬき』の三味線を弾いたときなんだそうですが、それとどっこいだったそうなんです。それが、2回3回4回とお客さんの入りが落ちなかったんで、ちょっと自信をつけて。
だから、本牧亭から真打ちにつながるあたりが僕の第二の転機ですよね。
<後編につづく>
春風亭小朝
落語家
1955年東京都生まれ。70年に15歳で春風亭柳朝に入門。76年に二ツ目昇進、80年に36人抜きで真打ち昇進。落語家のほか俳優としても活躍している。2015年、芸術選奨文部科学大臣賞受賞。20年、紫綬褒章受章。近著に『菊池寛が落語になる日』ほか
関容子
エッセイスト
雑誌記者を経て、エッセイストに。1981年『日本の鶯――堀口大學聞書き』で日本エッセイスト・クラブ賞、角川短歌愛読者賞受賞。96年『花の脇役』で講談社エッセイ賞、2000年『芸づくし忠臣蔵』で読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞を受賞。『勘三郎伝説』『客席から見染めたひと』ほか著書多数。最新刊『銀座で逢ったひと』(小社刊)が好評発売中