この思いは夫も同じだった。だからこそ、バイクを躊躇なく処分したのも必然だったのだろう。

ちなみに、バイクの売却で手に入った金額は15万円ほど。しかし、その何倍もの至福が、「2人の時間」を満たしている。夫は、近くにある実家に会計事務所とガレージを構えていたが、仕事後はかつてのようにガレージにこもることなく、夕食時間に必ず帰宅。

腎臓の具合が思わしくない夫のため、ユキさんが手作りした塩分控えめの和総菜4~5品が並ぶ食卓を囲み、その日の出来事を2人で話す。

夫のもう1つの趣味である家庭菜園から収穫した野菜が中心のメニューだ。結婚前まで肥満気味だった夫の体重は約10kg落ち、体調も小康を保っているとか。

「私自身も健康になったんじゃないかな。独身時代は同僚との付き合いで飲み代がかさんでいましたが、いまでは『夫が待っているから』と遠慮せず直帰できます。むしろ、馬の合わない人との会食を拒むことができて、精神的にとても楽になりました」

妊活も、そろそろめどをつけようかと考え始めたというユキさん。「夫婦だけの生活でも十分幸せ」とやわらかく微笑んだ。

 


《ルポ》やめる、捨てるで、人生が好転した
【1】趣味のバイクを手放して
【2】母と絶縁したら出費が減った
【3】親の衰えとお金の心配がなくなった