母の認知機能の衰えや散財を受けて、ついにマユミさんは施設へ入ってもらうことを決断。母親が素直に応じてくれたのも幸いし、施設入居は、想像を超えて平穏な心と時間をもたらしてくれた。

「たまたま、実家から近い場所に施設ができたんです。実家は維持すると約束したことと、その施設なら生活圏が変わらないし申請さえすれば外出OKで、いつでも自宅へ戻れるというのが母のお眼鏡にかなったみたい」

入所費用は500万円。家賃・食費・光熱費など月々の諸費用がさらにかかるものの、以前の無駄遣いに比べたら出費も減り、一安心。

「施設の食事が気に入った母は、一切外食をしなくなりました。『買い物代行サービス』を利用し、無謀なショッピングも皆無に。どうやら父の遺産が尽きることはなさそうです。依然としてマメに電話をかけてきますが、昼間なので許せています」

心配事をきれいに払拭できた、母の施設入所。そこで肩の荷が下りたマユミさんは、久々に夫婦旅行を満喫した。地方を巡った際、田舎の一角に佇む古い空き家と出会い、無性に惹かれたという。

「直感で『ここに住む!』と思ったんです(笑)。幸運なことに夫は建築士。朽ちかけた家もセンス良く、なおかつリーズナブルに蘇らせてくれるはずと踏みました。その古民家に移住したい旨を夫に伝えると、『案外、面白いかもね』と快諾してくれたんです」